低廉報酬をめぐる、それぞれの本音 最近よく目にする「仲介手数料◯割引」「定額〇万円」といった低廉報酬サービス。 表向きは“消費者にやさしい”ですが、業界人から見るといろいろ考えさせられるテーマです。
◆買い手の本音 「少しでも諸費用を安くしたい」 住宅ローン減税や登記費用などもかさむ中で、仲介手数料が数十万~百万円単位なら当然そうなります。 ただ、低廉報酬を選ぶと“内覧の案内は最低限”“アフター対応は自己責任”というケースも珍しくありません。 買主はそのリスクに気づかず「安い=得」と思い込みやすいのが実情です。
◆売り手の本音 「売れるなら多少安くても構わない」 でも安い手数料の案件は、広告や販売活動の優先度が下がるのが実態です。 物件ポータルでの露出や囲い込み対応に手間を割かず、結局“売れ残り”のリスクを抱え込む売主も。 売主にとっては“手数料の額”より“営業担当のモチベーション”の方が本質的な問題です。
◆業者の本音 低廉報酬は「集客のフック」にはなります。 しかし、1件あたりの収益は圧縮されるので、人材教育や広告投資を削るしかない。 結果として「薄利多売」で数を追うか、「人件費削減」で社員が疲弊するかの二択になりがちです。 本来の仲介サービスのクオリティを維持しづらくなるのは業界人なら誰もが感じていること。
◆行政の本音 「消費者保護を優先したい」 ただ、低廉報酬の普及が進むと、経営体力のある一部の大手だけが残り、中小は淘汰されかねません。 行政としても“自由競争”を促す一方で“サービス品質の低下”や“業者の乱立・淘汰”には目を光らせざるを得ない状況です。
◆まとめ 低廉報酬は「安さを武器にする新モデル」とも、「業界を疲弊させるトロイの木馬」とも言えます。 買い手・売り手には歓迎されやすいですが、業者にとっては体力勝負。 そして行政は“消費者保護と業界健全性のバランス”に頭を抱える。 不動産仲介の未来を左右するテーマですが――本音を言えば、 「報酬を下げる競争」より「サービスで差別化する競争」こそが業界の健全化に繋がる のではないでしょうか。