不動産の譲渡所得税とは、土地や建物などの不動産を売却したときに、その売却益(=利益)に対して課される税金のことです。 税額は「譲渡所得 × 税率」で計算され、所得税と住民税の合計として課税されます。
1. 譲渡所得の計算式 譲渡所得 = 譲渡価格(売却額)-(取得費 + 譲渡費用)
取得費 購入価格+購入時の諸費用(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税など)
※古い物件で購入価格が不明な場合は「概算取得費=売却価格の5%」で計算される場合があります。
譲渡費用 売却時にかかった費用(仲介手数料、測量費、印紙税、建物解体費など)
2. 保有期間による税率の違い 保有期間(売った年の1月1日時点での所有期間)により税率が変わります。
短期譲渡所得(5年以下) 30%+9%= 39%
長期譲渡所得(5年超) 15%+ 5%= 20%
3. 特別控除・軽減税率
3,000万円特別控除 居住用不動産を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除可能(一定条件あり)
軽減税率の特例 10年以上所有したマイホームの場合、一定額まで14.21%(所得税10%+住民税4%)に軽減 買換え・交換の特例 条件を満たせば譲渡益を将来に繰り延べ可能
4. 確定申告 譲渡所得税は給与所得と分離して申告(分離課税)
売却の翌年2月16日〜3月15日の間に確定申告
税額は申告後に納付
不動産売却時の譲渡所得税の節税方法は、 大きく分けて 「控除・特例を使う」+「取得費を増やす」+「売却時期を工夫する」 の3方向です。
1. 控除・特例を使う(節税インパクト大)
居住用不動産の3,000万円特別控除 自宅を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円控除 条件を満たせば相続空き家でも適用可 他の特例(軽減税率、買換え)と併用可能
軽減税率の特例 自宅を10年以上所有し居住して売却した場合 6,000万円以下部分は14%、超過部分は20%
買換え・交換の特例 売却益課税を将来に繰り延べ可能 住み替えや事業用資産買換え時に有効
相続空き家の特例 昭和56年5月31日以前の家を解体or耐震改修して売却 → 最大3,000万円控除
2. 取得費を増やす(課税所得を減らす)
取得費=購入価格+購入時経費+資本的支出
資本的支出とは、価値を高めるリフォーム・増築費など(クロス張替え等の修繕費は対象外) 古い物件で購入額不明の場合、「概算取得費(売却額×5%)」になると税額が増える → 古い契約書・領収書を探し出しておくのが節税の鍵
3. 譲渡費用を漏れなく計上 譲渡費用とは売却に直接必要な経費で、代表例は: 仲介手数料 測量費 建物解体費 印紙税 抵当権抹消費用 → 領収書をきちんと保管
4. 売却時期の工夫 保有期間5年超で長期譲渡(税率20%)になる → 所有期間計算は売却年の1月1日時点で判断 年明けまで売却契約を延ばすだけで税率が半分近くになる場合あり
5. 家族間の譲渡は要注意 特例適用外になるケース多い(親族間・同族会社) 節税どころか贈与税課税のリスク
6. 相続物件特有の節税ポイント
被相続人の所有期間を引き継ぐことで長期譲渡適用可
相続空き家特例と通常の3,000万円控除の併用可否は物件状況で判断
解体費用や耐震改修費用も譲渡費用として計上可能
節税の優先順位
3,000万円控除(居住用・相続空き家)
軽減税率
取得費+譲渡費用の最大化
売却時期の調整