五山送火

船岡山で迎えた初めての五山送り火  

2025年8月16日、京都の夏の夜。夕方から大粒の雨が叩きつけ、正直「今年は見られないかもしれない」と半ば諦めかけていた。だが、20時の点火直前、嘘のように雨が止み、空が一気に晴れ渡った。その瞬間、船岡山の斜面に集まっていた人々から、安堵と期待が入り混じったようなざわめきが広がった。  

 

私にとって、この日が初めての「生」で見る五山送り火だった。テレビや雑誌では何度も目にしてきたが、目の前で大文字が赤々と浮かび上がる光景は、想像以上に迫力があった。炎のひとつひとつが生きているように揺れ、山全体が祈りの場に変わっていく。  

 

船岡山の魅力は、何といっても視界の広さだ。この夜も五山のうち四つを同時に望むことができた。右手に「大文字」、左に「左大文字」、少し下に「舟形」、そして「妙法」。それぞれが静かに燃えながらも、互いに呼応するように夜空を照らしていた。  

 

驚いたのは周囲の人々の顔ぶれだ。集まったのは100人ほど、その八割が外国人観光客だった。皆スマートフォンを掲げたり、声を潜めて眺めたりしながらも、不思議と場の空気は静かで、炎に向かう気持ちは一つに見えた。見知らぬ人同士でありながら、同じ時間を共有している感覚があった。  

 

初めての送り火体験は、ただ「きれい」や「迫力がある」という言葉では言い表せないものだった。大雨の後に晴れ間が訪れ、まるでご先祖が「ちゃんと見届けなさい」と背中を押してくれたように思える。特別な夜に立ち会えたことを、きっとずっと忘れないだろう。

 

 

2025年08月18日